2016年08月

8月23日

土曜日は、第2回「藤沢名店落語会」開催しました。えー、お客さん少なくてすみません。第1回に気を良くして、宣伝が足りていなかったと思います。当たり前のことを当たり前にやることが大切。次回もっと頑張ります。 もしフジサワ名店ビルで落語会がやっていたら、高校生のうちに落語を生で聴いたかもしれないなあという、ここに落語会があれば良かったなあという場所で、今、落語会をやらせてもらっています。

まだまだ力不足ですが、ホールに入れなくなるほど沢山のお客様にいらしていただけるように続けていきます。藤沢でもやってるよって、頭に入れておいてくださいね。

8月10日

昨日の午後、浅草演芸ホールへ。昼席に出演している某師匠に稽古のお願いに伺う。お忙しい時間を縫って、2日後にお稽古をつけていただくことになった。お稽古のお願いができてホッとしているところ、昼席の出番だった宮治兄さんに子供服のお下がりを譲っていただく。この酷暑のなか、浅草まで大荷物を持ってきていただいて、有難うございます。

浅草昼席は「にゅうおいらんず」で超満員。終演後、楽屋に来ている若手はぜひ、ということで、打ち上げでどじょう鍋をご馳走になりました。

文治師匠がよく「噺家は万事、気遣いだよ」とおっしゃるが、まさに。売れている人ほど隅々まで気を回してくださる。見習うべき先輩が身の回りにこんなに沢山いる。

今日は、野菜を買いに行こうと思っていた矢先に、ピンポーンと玄関のベルが鳴る。かみさんの友達から夏野菜がどっさり届いた。トマト、ピーマン、ナス……。冷蔵庫が野菜で溢れかえってます。これでしばらくは生き永らえます。

そしてさっき、学生時代の先輩から落語会のお仕事をいただいたところ。

なんというか本当に、皆様にお気遣いにお世話になりっぱなしで。今の自分ができることは小さいけれど、自分なりに、いま手の中にあるものでお返ししていかないと。

8月8日

瀧川鯉丸・雷門音助二人会、第1回「鯉丸と音助」が無事終わりました。来場してくださった方、気にかけてくださった方、ありがとうございました。

自分たちの手で興行を打った二人会は初めてでした。いえ、正確にいうと、前座の頃に鯉八兄さんと二人の勉強会をやらせてもらっていました。前座の自分にとって本当に貴重な会でしたが、あの会は二ツ目の鯉八兄さんにおんぶに抱っこの状態。とても対等ではありませんでした。実感として、自分たちでゼロベースで立ち上げた二人会は、今回は初めてです。

私も自分ひとりだけの勉強会を数カ所でやっています。前座の頃は、自分だけで90分以上落語を演って会を成立させることはとても至難のように思えました。いや、至難なんですが。

しかし、二ツ目になると一人だけで落語を演る機会が増えて、どうにかこうにか90分、120分を一人だけでもたせることが多くなります。自分ひとりだけでやれているという錯覚に陥ります。

一人会の客席は基本的に、自分だけを見に来てくれるお客さんです。自分の落語を、能動的に体に取り込んでくれようというお客さんがほとんど。つまり、自分の実力以上に「のせて」くださるんですね。それは本当に有難いことです。

二人会は、それぞれのお客さんが客席にいらっしゃるし、この組み合わせだからいらっしゃった方もいる。どういう会になるか本当に未知数です。今回、音助は「置き泥」で僕は「宿屋の仇討」をネタ出ししてましたが、ネタおろしだったのでとても緊張感がありました。相手がいい高座をしてくれているのに、自分の高座が駄目だと会全体が失敗してしまうという。これは、一人会にゲストを呼ぶのとも違うし、これが三人会になると三等分になりますから、もう少し雰囲気が違ってくるんだと思う。

自分だけの勉強会はもちろん大事。でも、それをやりつつ、二人で一つの会を作っていくというのは本当に得るものが大きいなと感じました。

落語会の名称をつけるのって難しいんですけど。この二人をパッケージングするのではなく、この二人会をやることで、それぞれの落語をもっといいものにしていきたい。だから会の名称も、「鯉丸と音助」としました。まだ始まったばかりの会ですが、ぜひ頭の片隅に入れていただいて、ご来場いただければと思います。

そして音助さん、これからもよろしくお願いします。

次回は9月5日(月)開催。特別ゲスト、桂南なん師匠をお迎えします。

8月7日

明日の、雷門音助との二人会に向けて稽古してます。「宿屋の仇討」をネタおろしします。

宿屋の仇討、さくさく進んでも35分くらいあります。人も多い、場面転換も多い。侍言葉がなかなか体に馴染まない。こんなに長くて難しい噺は初めて。

でもすごく落語らしい。これを早く、楽しく演れるようになりたい。

しかしまあ、この間覚えた「お菊の皿」もそうだけど、三人連れって面白い。この人たち、完全に修学旅行ですね。近いうちに「三人旅」も覚えよう。

戻ります。

8月5日

 

駅前で若手の落語会「キッテ グランシェ落語会」。東京駅から直結している商業施設「KITTE」の地下1階、グランシェ内のイベントスペースで月1回ペースで開催予定。わたし、栄えある第1回に出演させていただきました。

まあ、第1回ですから、色々ありました。すべて最初からスムーズにいくわけがない。お客様も会場の方も落語家も手探りの状態です。お客様の出入りが激しいとか、会場外からの雑踏の音があるので静かなネタは演りづらいとか。

でも、それは回を重ねるごとに改善されていくことでしょう。1時間やったんですが、中盤以降はお客様もぐっとこちらへ集中してくださるようになって、だいぶ演りやすかったです。今のままだと、手の込んだ噺、人情噺は演りづらいかもしれないけど、でも、いろんなタイプの落語会があっていいんです。

「落語初めて聞いたけど、面白かった」

終演後にお見送りをすると、こういった声をたくさんいただきました。ありがたいね。この丸の内の真ん中で、物販でなく、落語で人の集まりが生まれた、という事実が本当に嬉しかったです。「キッテ グランシェ落語会」、ぜひ続けていただきたいと思います。落語との初めての出会い、たくさん生まれるといいな。

第2回は9月1日(木)午後6時半より、桂竹千代さんが出演します。

暗い夜道を歩いて家に帰ると、「東京かわら版」さんから分厚い郵便物が届いてました。

え、なんだろうと思いながら封を開けると、師匠、瀧川鯉昇の著作が入っていました。題して『鯉のぼりの御利益』あす発売の新刊です。えっ、って、驚きました。師匠が本を出すなんて全く知らなかったから。弟子のくせに。師匠がいくつもの出版物に紹介されたりインタビューを受けている文章は読んでいましたが、師匠の単著は初めての出版。

しかも、同封の編集部の方からのお手紙を読むと、この本のなかで一門の弟子への言葉も綴られている、とある。いきなり好きな人からの手紙が来たみたい。いつも「ああしなさい」「こうしなさい」ということは一切言わない師匠ですから、どんなメッセージだろう、だいぶドキドキしながら、ふわふわとした気持ちで読み始めました。

で、さっき読み終わったところ。読み終わって、しばらくぼーっとしていました。

なんだろう。

読んでいる間、浮かんでくる風景がずーっと、夜でした。

この本では、師匠の生い立ちから芝居に心奪われた学生時代、入門をするまでの苦労、入門してからのもっともっと大きな苦労、二人の師匠のこと、落語の噺のこと、お世話になった方々のこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、いつも思っていること、そして弟子への言葉。うちの師匠を形作っているものが、装飾されることもなく、かなり"素のまんま"文章になっている。師匠のモノローグがそのまま活字になっている感じ。ぼくが師匠から聞いたことのある話も多かったし、その中でも、弟子にもここは話していなかったな、という場面もある。

こういう、師匠の思いを帯びているはなしを聞くのは、いつも落語会がはねて打ち上げも終わったあと、帰りの電車の中が多い。師匠の故郷、静岡県におともすることが多いので、このはなしは帰りの「こだま」の中で聞いたなあとか、そんなことを思いながら読んでいたら、心の中が夜でした。

師匠のことばの選び方、跳び方、運び方が好きで入門したんですから、そんな師匠の文章ですから、ずっと直球ストライクがズバンズバンと入る感覚で読みました。

そして内容も。

生まれた町の空気、寄席までの電車賃、お世話になった寺の住職の親戚の名前、本当によくそんなこと覚えてんなってことがたくさん出てきて。それは単なる情報ではなくて、師匠の身体の中に手ざわりが感じられるほど残っていることなんでしょう。焼酎の値段と、あの夜、八代目春風亭小柳枝師匠の一言が一緒くたになって入ってる。

師匠は弟子につねづね、「最後は、じぶんの感性だから」と言います。教えられたことを鵜呑みにしても駄目、じぶんで気づかなきゃ意味がないんだよって。このことばは本当に師匠の実感から出たことばなんだなって、この本を読んで分かります。

師匠は、夜道を灯すお月さまのようです。

この本に書かれていること、神棚に飾ることなく、いつも懐に入れて日々を生きていきたいと思います。

……。弟子がじぶんの師匠の本に対してこんなふうに書くのは、子供が「うちのとうちゃん、えらいんだよ」って言ってるみたいで気後れしますが、いい本です。素敵なことばがぎゅっと詰まってます。本日発売。ぜひ読んでください。

「東京かわら版」編集部の皆様、ありがとうございます。

明日からまた、もがきます。

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